アムドの南

中国青海省東北部チベット文化圏を中心にした旅の記録です

唐克・九曲黄河第一湾

 

バスを2時間弱乗り、道が直角に曲がる所で降りた、「唐克」の入り口だ。ここには九曲黄河第一湾がある。

バスを降りてうろうろしていると、若い男が運転する車がすぐに来た。
成都から来た若いカップルも乗せると、客はこれだけで満足なのかすぐ走り出した。
すぐ近くの小さな「唐克」の街を通り越し、索克蔵寺の前に広がる九曲黄河第一湾まで行く。
20分弱で着く、また美しい所に来てしまった。

 

車を降り、時間もたっぷりあるからゆっくり見物しようと思ったが、荷物がじゃまだ。
どこか預ける所がないかと見ると、小さな売店がお堂の横にあった。

でも閉まっている、中をのぞいても誰もいない。と、坊主が二階の窓から顔を出す。
なんとこんな所にクリームシチューの有田似の坊主がいた。
荷物を預かってほしいのですが。と聞くと、
いいよ、そこ置いとけ。
って、ここ外ですけど、内がいいんですが。
じゃあ上がってこい。

裏に回ると二階に上がる階段があった。上ると控えの部屋があり、その奥の部屋に坊主二人と若い女性がいた。
部屋の造りはけして上等とは言えない。
三人は食後の休憩中だった、楽しそうに話をしている。

座って少し話をする。女性が中国語を話せる、通訳してくれる。
小さい寺のようだけれど、坊主は200人もいると言った。
テーブルの上に、炊いたばかりのご飯が炊飯器の中にあった。
食べるかと聞かれた、ちょうど腹がへっていたので遠慮なくうなづいた。
ご飯茶碗を棚から出し坊主がよそってくれる。
ちょっと嫌な記憶がよぎった。

 

チベットを行く旅行記はいくつかある。そのうちの一つに、太平洋戦争末期にモンゴル僧に変装してラサまで旅した、西川一二三さんの本がある。
絶版なので古本しかないが、厚い文庫本で三冊になっている。
その西川さんが旅の途中一つのテントを訪れる、おばあさんがバター茶をごちそうしてくれる。あいにくその日は碗を持ち忘れていた。
おばあさんは棚から碗を取り出し、なんと唾をふきかけ、鼻汁がこびりつきガバガバの長い服の袖でふいてから入れてくれたそうだ。
外国人だとばれるわけにはいかない西川さんは無理してお茶を飲んだらしい。

 

しかしここの坊主はちゃんとふきんで拭いてくれた。若干よごれていたけれど。
ご飯の上に肉と白菜を炒めたおかずをのせてくれる。
この坊主すごく料理がうまい、味付けがばっちりだった。
なんだかこの部屋は、まったりとした時間が流れている。東京と比べたら約10倍くらい時間が長く感じる。

      料理のうまい坊主

      有田似の坊主

 

そんな部屋を後にして見物する。

黄河が西、「達日」方向から流れてきて、寺のある丘にぶつかり二手に分かれる。

平原をたくさん蛇行して流れている、それを寺の上の丘から眺められる、きれいだ。

本流は右に流れて曲什安へ、左は紅原方向に流れていく。

成都辺りからの観光客がたくさん来ていて、途中までできている遊歩道の上を歩いている。

 

鉄線が張られていたが簡単にこぐれたので、人のいない所を選びポットのコーヒーを飲んだ。
なんだかとても気持ちがいい、遠くまで見えるゆっくりいくつにも蛇行している川のせいだろうか。

丘の上のタルチョ、今までの地方とは形が少しちっがう。

マーモット(?)の巣、少しメタボだ。

 

丘を降りるとゴンパの全景が見えた、コルラする道がきちんとできている。しかし高度のせいでもう一度ぐるりと回る元気がない。

コルラ用のマニ車の道が廻っていた。

いくつかお堂を見て回った。
川岸まで行って、記念にオシッコをした

 

そろそろ帰ろうと思ったが、ここには乗り合いはないと言う。
こまった、歩くことにしようか、遠く街が見える1時間もあれば着くだろう。
さっきの坊主の部屋を訪れ荷物を持ち出す。あいにく二人はいなかった、10元だけ机の上に置いておいた。


街までの道には遊牧民風食堂と小さな牧場がある。やさしい馬が何頭かいて観光客を乗せてそのへんを歩く。
それを仲間が一生懸命カメラで写す、中国人も本当に写真が好きだ。大繁盛らしくそこいらじゅうに牧場がある。
30分も歩くとさすがに飽きてきた、車が通らないかなあと思っていると、反対側を走ってきた運転手が声をかける、さっきの兄ちゃんだ。
いいタイミングだ、旅をしているとよくこういうことがある、道がわからなくなったり歩き疲れているとどこからともなく車がやってくる。

街の賓館に連れてってくれた、一番いいとこらしい。
九曲黄河第一湾の観光料をもらってないと言われ、車代30元の他に50元とられた。10元まけてくれた。
まだ明るかったので街を見てから、茶館に入って窓から外を見ていた。
ここもたくさんの男たちが民族衣装を着てバイクに乗って街に来て買い物をして帰って行く。
街の周りにたくさんの遊牧民が住んでいるのだろう。
ホテルは思ったよりよかった。