アムドの南

中国青海省東北部チベット文化圏を中心にした旅の記録です

達日・ケサル大王の像

 

「達日」は何もありませよ、旅行社の人が言っていた。しかしここは「瑪多」を過ぎた黄河が次に通る街だ。

バスは黄河にかかる橋を渡り達日の街に着いた。

アムドの街はどこもそうだが、街の中心の通りを広げ、両側の店をすべて新しく建て替えてある。それもそんな昔ではなく最近だ、周りの家もみんな新しい。でもどこもみんな現代中国風で変わりばえせずつまらない。

達日も同じように新しい。ホテルを探して歩く。かなり遠くにいいホテルがあったが、入ってみても掃除している人しかいない。

誰かに聞いてみようと思ったら、階段を拭いていたおばさんがやってきて、今は水も出ないし電気もつかないから夜の8時に来て、そうすれば泊まれると言う。

しかたないので荷物だけ預かってくれと言うと、そこの事務所に入れといてと言われた、全くの無防備だ。

言われた通りドアを開け荷物を入れて外に出ようとすると、ロビーに裏の山の模型が飾ってあった。

山の上にマニ車、チョルテン、お堂などを並べ、一番高い所にケサル大王の像が立っている。

へえー、観光のために造ったのか。ケサル大王とはこの地方ゴロクの昔の王様だ。今も尊敬されている。

 

外に出て見上げてみると確かにあった。

像めざして登って行く、しかしこの街は3900mもある、富士山の頂上を歩いているようなもんだ、なかなか進まない。イエローポピーとタルチョが迎えてくれる。

マニ車を回して、お堂をのぞいて、やっとケサル大王の真下に来た。

 

右(東)は達日の街並み、ごみが散らかる街も上から見るときれいだ。左のはしに渡ってきた橋が見える。

左(西)は黄河、平原に出た黄河が幾筋にも広がって、また大王の像の下で一本になって次の街に流れていく。

参拝者が播いたルンタが美しい。

丘を下ってシートを敷いて、ポットに入れてきたコーヒーを飲む、黄河を目の前にして。

目の前の道路をバイクが通る、ニコニコして手を振ふりながら、いいとこでリンカ(ピクニック)してるじゃないかって感じだ。

また通るから手を振ってこたえようと思っていると、全く気にせず見もしない。チベット人すべてがニコニコしているわけではないのだ。大体三台に一台が手を振る。

 

いい気分で休んでいるとヤクの訪問を受けた。丘で草を食べてテントに戻ろうとしている。私に遠慮して少し手前を飛び下りていった。

よく見ているとほとんどのヤクは二頭で行動している、夫婦仲がいいみたいだ。単独行動のヤクもいる。

 

私も街に戻ろうと丘を飛び下りるとなにかが飛び立った。土の斜面を見てみると穴があいている、鳥の巣だろうか、少し離れたところで見ていると、主が戻ってきた。スズメに似てるがなんという鳥だろうか。

 

丘をぐるっと回ると街のはずれに出た。確かにこの街はこれしかない、ゴンパもない、飯でも食おう。