四、エピローグ
西安までの列車は夜の8時頃発車する、それまで会社で聞いた茶芸に行って、お茶を飲み本でも読んで時間をつぶそうと探していると、本屋があった。青海省の地図を持ってレジに行くと横に女の子の三人組がいた、うまく買えず迷っているといろいろ教えてくれた。
話し方がへんだと思ったのだろう、どこから来たのかと聞いてきた。ジャパニーズと答えると、小さく歓声をあげた。いろいろ僕の世話をやいてくれる、ついでだからこの辺に茶芸がないか聞いてみた。実は彼女たちも北京から来ていた、道行く人に聞きながらいろいろ探してくれる。
連れて行ってくれたのは普通のお茶屋さんだった、ここでは休めないな。しかたない一人で探してみようと思っていると、交渉してくれてここで飲むことになった。試飲する人のために椅子がいくつか置いてある。一杯十元だ、お茶屋のオヤジが言う。それで一時間もいてもいいのか、あまりいい顔はしなかったがおじゃますることになった。
ところがなぜか彼女たちも一緒だった、明日から車でラサに行くらしい、今日は時間があるのだ。やはり彼女たちも日本ファンでタレントの嵐やアニメのタイトルをあげ話をする。上海生まれで北京の大学に学んでいる、一人はウルムチ生まれだった。
北京から来た三人組、この頃は中国人もピースする、
オヤジは省略
僕はあまり話せないがいろいろ会話がはずんだ。一杯というのはお茶の葉が一杯でお湯はいくらでも注いでくれる。
山東省から移住して雇われ店主のオヤジも楽しそうだ、それはそうだ北京から来た女の子と話をするなんてめったにはないはずだから、ついに気をよくして、金はいらないここは俺のおごりだといい出すしまつ。
それでは悪いので何か買おうと思いプーアール茶について聞いてみる、プーアール茶は年々高くなっている、人気があるといっていた。よくお土産にもらう小さい丸いやつがほしいといってみるが、あれは本物の大きい円盤型のプーアール茶とは似て非なるものらしい、取りあってくれなかった。
なんだかとても楽しい気分で小一時間を過ごし、店を出て彼女たちとも別れる。俗にいう90后、チューリンホウだ。今までいろいろ接してきた中国人とは明らかに違う、反日抗戦ドラマより日本製アニメを見ているから日本に対する感情はとてもよい。
日本のマスコミがあまりにも反日的な報道ばかり流すから、正確な中国人像をつかめず、いまに日本人全体の見方が間違ってしまわないか心配だ。中国の街を歩くと何もかもが日本を手本にしているように思える、手本になっていないのは政治くらいか…。見ている人は日本のいいところをきちんと見ているのだ。
昔と違い北京の空港などで働いている若い人たちも、明るく楽しそうに働いていてマナーもよい。これらの若い人達の情熱を、あの古くさい顔と一昔前の中国人の政治家の体型をした習近平は、受け止めることができるだろうか。
グリさんからもらった幸せはまだ続いていた。街から遠い西寧西の駅から乗り込んだ列車のコンパートメントには、20年前北海道大学に留学して博士号を取得したという、日本びいきの御夫婦がいた。今は北京の大学で地質学の教授をしているという。西寧で学会に出席した帰りらしい。
もう日本語は忘れてしまったなあなどといいつつ会話ははずむ。北京には日本料理店がすごく増えているんですよ、でもアサヒビールを出す店が少ないのはどうしてかな、僕にもわからないけど。私は日本のアサヒビールと刺身が大好きですよ、寿司はそれほどでもないな。中国のビールはやっぱり青島だな。
話も一通りすむと、では失礼しますと上段のベットに上がっていった、やはり日本好きだという奥さんが言う、あの人はビールを飲んで早く寝るのが大好きなのと。僕も同じですよ…。
僕たちも早めにあかりを消し床についた。列車はガタゴトと音を立てて西安へと向かって行った。
いつの日にかのためにグルグル回る コルラの夏
グルグル回る夏 回り回って僕があるのか
天空にテントを張って働く 青ケシ 忘れな草
おわり