ノルツォさんの兄
やっとアムドに出発だ、「同仁」へは二時間もあれば着くと思っていたが四時間近くかかった。ゆっくり出たので昼過ぎていた。
バスターミナルは街の中心近くにあるが、低い所にあり荷物を持って坂を上がるのがきつい。街は全く木がないような印象でなんだかさみしい感じがする。
約束した場所がわからないので、街の中心にある小さなホテルで電話を借りてノルツォさんのお兄さんにかけてみる。
電話は通じたが、話が通じたか少し不安だ。しかししばらくすると笑顔でバイクに乗った男がやって来た。
握手をするとすぐに道を渡り、橋のたもとに行ってしまった。あせって後を追いかけると、携帯で電話をしていた。そしてまたしばらくすると笑顔でバイクに乗ったもう一人の男がやって来た、だいぶ若い。
お兄さんは私の荷物を背負い走り出す、もう一人の男は荷台に私を乗せてついて行く。そして橋を渡った先の四角いコンクリートの掘っ立て小屋のようなところに着いた。ここでホームステイか…。
中に入ると女の人がミルクティーをくれ、テーブルにある大きなパンを食べろとすすめる。
若い男は日本語ができた、ニャン君という。でも日本語はいまいち何をいおうとしているのかわかりにくい。
女の人はお兄さんの奥さんだった、息子が一人いる。父によく似た息子は、お父さんの乗ってきたバイクに母を乗せどこかへと走り去った。
日本人の私には掘っ立て小屋に見えたが、ここはお兄さんの家だった、すみません。
片側にくくりつけの大きなベットがあり、反対側に炊事道具がある、水は外に水道の蛇口が一本突っ立ている。まん中にテーブルと大きなソファー、それで全部だ。
ここで三人寝るのだろうか、ずいぶん狭いと思うけど、ニャン君は狭くないですよという。チベット人の家の基本はテントだとすると、確かにここは狭くはないかもしれない。
お兄さんとその家
ニャン君と話すうちにいろいろわかってきた。お兄さんはツェタンさんという、そしてツェタンさんはなかなかのやり手だった。
家の前の広い土地は全てツェタンさんのものだ、そしてトラックなどの修理をしている。ひっきりなしに大きな車がやってくる、修理の店は四件もある。みんな貸しているのだ。修理の店の裏は通りに面した旅館だ、旅館といっても外国人は泊まれない。旅行の手配もしてるようだ、今日の宿泊もツェタンさんの手配だ。
いつまでたっても何の動きもないので家の周りを歩いてみる。隣の丘に同仁一のホテルがあった、できたばかりの感じだ。
ツェタンさんの旅館の中を見せてもらった、なかなかきれいだ、トイレは共同。シャワーや洗面所はない、家の前の蛇口一本だけ? チベット人は体や手は洗わないのだろうか。
ここに泊まってみたいといったが、全く取り合わない。たぶん公安がうるさいのだと思う。
修理の店、後ろが旅館
家の後ろも増築中、店か旅館
やっと車がやって来た、みんなタクシーを待っていたのだ。運転手となぜか知らない男と私が乗り込む。ニャン君はどこかに走り去ってしまった。
ツェタンさんに挨拶したいのにさっさと車は走り出す。チベット人は別れの挨拶はほとんどしないみたいだ、日本人としてはそれでは困るがいたしかたない。
しかしすべて説明がなく、なんだかさっぱりわからない。
えー、この車いったいどこへ行くんだ?